公開:2022.03.01

サテライトオフィスを導入するには?導入企業6社の事例を紹介

テレワークの普及が進み、日本でもサテライトオフィスの設置事例が増えています。2020年以降は新型コロナウイルス対策としてサテライトオフィスの利用が促進された面もありますが、以前からワークライフバランスの改善を目的として導入されてきました。

サテライトオフィスは地方での人材獲得や地域活性化を目的として設置される事例が目立ちますが、最大のメリットは労働環境改善です。そのため、地方のみならず都市部や郊外にもサテライトオフィスを開設する事例はあります。

そもそもサテライトオフィスとは何か、どのような導入事例があるか見ていきましょう。

1.サテライトオフィスとは

1.サテライトオフィスとは

サテライトオフィスとは、企業の本社を惑星に見立てた時に、軌道上を周回する衛星(サテライト)の役割を果たすオフィスの事です。従来は本社や支店で行わなければならなかった業務を、インターネット環境の整備によってサテライトオフィスで行えます。

サテライトオフィスと本社を、テレビ会議やビジネスチャットを活用して連携すれば、本社同様のオフィス環境を実現可能です。地方での導入事例に注目が集まりますが、サテライトオフィスには都市型や郊外型といった分類も存在します。

日本では民間のみならず総務省もサテライトオフィス導入を推進しており、Webサイトで多くの事例が紹介されています。

2.サテライトオフィスの分類

2.サテライトオフィスの分類

2-1.都市型

都市型サテライトオフィスの導入は、都心付近に住む従業員の通勤時間削減を目的とする事例が多く見られます。有名企業からの転職者や一流大学の出身者は都心勤務を望む傾向が強いため、地方に本社があっても都市型サテライトオフィス勤務の希望者が多いのです。

都市型サテライトオフィスは家賃などのコストが地方よりもかかるため、より大きいメリットを得られる場合に設置する事例があります。地方のIT企業や特産品の製造・販売企業が都市部での営業を強化するなどの事例です。

また、元々は都心に本社があった企業が良好な環境を求めて地方に移転し、一部機能を都市型サテライトオフィスに残す事例もあります。

2-2.郊外型

郊外型サテライトオフィスの設置は、都市近郊に住む従業員の通勤負担削減を目的とする事例が主流です。通勤によるストレスと時間のロスを減らせるとともに、子育てや趣味に時間をかけられるようになり、ワークライフバランス改善につながります。

郊外型サテライトオフィス専用のレンタルスペースを提供するサービスも存在するため、導入に向けたハードルは低いといえます。また、導入事例が多いため、先行企業からサテライトオフィスの開設方法を学べる事もメリットです。

都心から1時間程度の場所でも、郊外型サテライトオフィスに勤務すれば育児や介護、趣味に費やせる時間が増加します。また、郊外型サテライトオフィスと併用されることが多いのが、電車の通勤ラッシュを避ける時差出勤導入の事例です。

2-3.地方型

導入事例が多く取り上げられるのが地方型サテライトオフィスです。総務省の調査によると、令和元年(2019年)度末に開設されていた全国654のサテライトオフィスのうち、北海道が74件、次いで徳島県が67件と、地方での開設事例が非常に多くなっています。

地方型サテライトオフィスは、社員や家族が自然豊かな環境で生活できるのが特徴です。地方出身者やUターン者を雇用できるメリットもあります。また、補助金など自治体からの支援がある場合も多い事もメリットです。

サテライトオフィスと本社の社員が遠距離の勤務となるため、社員同士の交流を目的として年に数回の会合・イベントを行う事例も見られます。

3.サテライトオフィスを導入した6社の企業事例

3.サテライトオフィスを導入した6社の企業事例

ここまでサテライトオフィスを3種類に分けて紹介しましたが、次に具体的な事例を厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトから見ていきましょう。実際にサテライトオフィスを導入した6社の事例です。

事例となる6社の業種はさまざまであり、商社や食品会社などをはじめ、都心に路線を持つ鉄道会社もサテライトオフィスを開設しています。多くの事例では、サテライトオフィスの開設目的はワークライフバランスの改善です。

サテライトオフィス導入事例に共通するのは、社員の自由な働き方をサポートしている点です。サテライトオフィスや在宅勤務を選択可能で、社内ネットワークへのアクセスにより本社と同様に働けます。地方の優秀な人材を獲得した事例もあります。

3-1.住友商事株式会社:200拠点のサテライトオフィスで社内とほぼ同様の業務を可能に

大手商社の住友商事株式会社は、会社が契約したサテライトオフィスに社員が勤務するテレワーク制度を導入しています。この事例では、首都圏を中心に約200のサテライトオフィスで勤務可能であり、会社が貸与する業務用ツールの使用で社内と同様の勤務が可能です。

「在宅勤務」「サテライトオフィス」「モバイルワーク」は原則として勤続1年以上の社員が利用でき、週14.5時間が上限です。そうした新しい働き方の浸透に努めた結果、2019年4月~6月に平均770時間だったサテライトオフィス利用時間は、同年8月に約10倍の7,738時間に増加しました。

業務計画を事前に上司と協議し、サテライトオフィスでの勤務状況もスケジューラーやチャットツールで共有して、業務の円滑化とモチベーション維持を図ります。

出典:導入事例 住友商事株式会社|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

3-2.味の素株式会社:サテライトオフィスでの経営会議実施など経営トップが率先して推進

食品大手である味の素株式会社は、サテライトオフィスで経営会議を実施するなど経営陣がリモートワークを率先して導入しています。社内サイトで月2回テレワークの事例を発信するとともに、社長自らが月刊の社内報でテレワークの意義を述べるのも特徴です。

「どこでもオフィス」制度により、自宅や全国約140拠点のサテライトオフィスでリモートワークが可能です。通常の出社を週1度行えば、4日間のサテライトオフィス勤務もできます。サテライトオフィス等でのリモートワークは勤続1年以上の全社員が対象です。

最短30分、最長で終日行えるとともに、在宅ワークの場合は育児・介護と勤務の両立も認められています。業務内容は問わず、前日までに申請すればサテライトオフィスを使えるため、2018年3月時点で年間のテレワーク利用者は84%に達しました。

出典:導入事例 味の素株式会社|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

3-3.SCSK株式会社:サテライトオフィスの「体験エリア」設置で導入当初の社員の不安を軽減

SCSK株式会社は、データセンター等を運営するIT関連企業です。2007年にテレワーク制度を導入し、2017年には更にサテライトオフィス勤務・モバイル勤務を加えました。通常は月8回まで、妊娠・育児・介護などの事情があれば月8回超のテレワークを実施可能です。

サテライトオフィスなどでテレワークを行うには、勤怠管理システムで日程・勤務時間を申請して上長の承認を受けるだけで済みます。毎日の始業・終業時に、メールによる勤務時間と業務内容の上長への報告も必要です。

導入当初には、テレワークのIT面・業務面に不安を抱える社員に向けて、拠点内に「サテライトオフィス体験スペース」を約70席設置。現在も、社内ホームページ内で動画マニュアルやFAQ集を整備し、スムーズなテレワークを推進できる環境を整えています。

出典:導入事例 SCSK株式会社|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

3-4.株式会社リコー:各事業所に終日勤務可能なサテライトオフィスを設置

事務機器製造の株式会社リコーは、入社1年以上の社員が自宅やサテライトオフィスでテレワークを行えます。出先でのモバイル勤務は全社員が利用可能です。セキュリティソフトを導入した会社貸与のパソコンで、Web会議システムやメールを利用できます。

出張中でも所属する事業所と同様に業務を行えるのが、各事業所に設置されたサテライトオフィスです。また、2019年度には外部サテライトオフィスも開設され、VPNで社内ネットワークに接続して業務を行えます。

リモートワークは月10回まで利用でき、サテライトオフィスでの終日勤務も可能です。フレックスタイム制との併用で育児・介護に取り組みやすくする事例であり、社員の満足度は2017年の3.08ポイントから2018年の3.29ポイントに増加しました。

出典:導入事例 株式会社リコー|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

3-5.東急株式会社:スライド勤務も活用した「直行と直帰」推奨で時間外労働時間を約3割削減

東急電鉄などを傘下に持つ東急株式会社では、時間外労働時間の約3割削減を達成しました。時差出勤を含むサテライトオフィスへの直行・直帰促進のほか、人事制度改革や時間外労働・休日労働の原則禁止が主な要因です。

ミーティングできる会議室を併設し、チームでのサテライトオフィス勤務を導入したのも特徴的な事例です。介護や育児を行う社員は、自宅近くのサテライトオフィスでフルタイム勤務できます。

所有する全国130カ所以上の会員制サテライトオフィス「NewWork」は他社にも貸し出し、テレワーク普及に貢献しています。会社貸与のモバイルパソコンを使用し、勤怠管理について上長の指導を受ける必要がありますが、サテライトオフィスでの勤務日数に上限はありません。

出典:導入事例 東急株式会社|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

3-6.株式会社ダンクソフト:地方サテライトオフィス設置で全国的に優秀な人材の採用に成功

地方型サテライトオフィスの成功事例が、ICTコンサルティング事業を行う株式会社ダンクソフトの取り組みです。徳島での勤務継続を希望していたものの東京転勤を命じられて退社した人のために、徳島にサテライトオフィスを開設して雇用した実績もあります。

従業員数25人でありながら誰でもサテライトオフィスや在宅での勤務が可能で、中小企業の成功事例でもあります。日報による勤務管理とWeb会議システムの利用に加え、クラウド上で作業を共有することでオフィス勤務と同様の環境を実現しました。

サテライトオフィスの開設により、病気休職・育児休職した人の復職支援や、栃木や高知など全国に住む優秀な人材の確保にも成功しています。古民家やゴルフ場をサテライトオフィスに利用したのも特徴的な事例です。

出典:導入事例 株式会社ダンクソフト|テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省)

まとめ

サテライトオフィスの種類と、企業における導入事例をご紹介しました。いずれの事例にも共通するサテライトオフィスの設置目的は、ワークライフバランスの改善です。仕事と育児・介護との両立を実現することで、労働生産性の向上につながっています。

サテライトオフィスは地方での設置事例が目立ちます。地方に住む優秀な人材を確保できるのは事実ですが、大都市郊外にサテライトオフィスを設けて通勤時間を短縮した事例もあります。最大の目的は職住近接で、設置場所が都市か地方かは結果にすぎません。

最適なサテライトオフィスの設置形態は企業ごとに異なります。他社の事例を参考にしつつ、社員のニーズを汲み取って導入を目指してください。

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